Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
同じウォール・ローゼ内にあるトロスト区駐屯兵団本部には割とすぐに到着した。
馬車を降りた三人は、本日泊まる予定の宿の部屋へ荷物を置いて本部へ向かう。
中へ入るとあちこちから視線を感じた。自由の翼を背負うジャケットを着用する三人は目立つ。その上、団長と兵士長が堂々と歩いているのだから、目立たないわけが無い。
なんだかエミリは自分が場違いに思え、縮こまりながら二人の後ろを歩いていた。周囲の人間を気にしながら……
「エミリ」
「……あ、はい!!」
急にエルヴィンに話しかけられ、エミリは咄嗟に顔を上げる。周りの様子を伺う方に集中していたため、驚いたエミリはビクリと肩を揺らした。
「私とリヴァイはピクシス司令に挨拶に行ってくる。君は先に食堂に行って待っていてくれ」
「分かりました」
エルヴィンの指示に頷き、二人と別れたエミリは兵団内の見取り図から食堂を探していた。
「えっと、食堂は……」
細かい兵舎の地図を目を凝らして順に目を通していく。が、周りの視線が気になって落ち着いて地図を見ることができない。
さり気なく周囲を見渡すと、通りすがりの駐屯兵達がチラチラとエミリを見ている。
(……うぅ、すごい気になるんですけど)
そりゃあ、駐屯兵団の本部に調査兵団の兵士がいるのだから目立ってしまうのは仕方が無いが、がん見する程ではないだろう。
居心地の悪さから重たい溜息を吐いた。そんな彼女に救いの声がかけられる。
「おい、お前もしかして……エミリか?」
「!?」
聞き覚えのありすぎる、懐かしい声。エミリはゆっくりと隣へ顔を上げた。
そこに立っていたのは、エミリが赤ん坊の頃から世話になっていたハンネスが、目を丸くしながらエミリを見下ろしていた。