Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
二週間後、会議の日となり荷物を持って兵舎を出たエミリは現在、エルヴィンとリヴァイと共に馬車でトロスト区の駐屯兵団へ向かっていた。
今日の天気は曇りひとつ無い晴れ。だが、エミリの心を天気で表すと、どんよりと灰色の雲が漂っているといった情態だ。
「……はぁ」
思わず溜息が零れる。
会議の緊張とそれとはまた別の不安が混ざりあって、駐屯兵団へ近づくにつれ気分が下降する一方だ。
「エミリ、大丈夫か?」
「……あ、はい! 問題ありません!!」
少し顔色の悪いエミリの様子が気になり、エルヴィンはできるだけ優しく声を掛ける。
けれど、彼女から返ってくる言葉はやはりいつもと同じもの。
何でも無いことないだろうと言いたいが、今は会議の方に集中してもらわなければならない。
「緊張しているのか?」
「そうですね。会議に出席するのは初めてなので、少し……」
「そうか。まあ、そんなに固くならなくてもいいさ」
肩を竦め、小さな声で返事をするエミリの頭を優しく撫でてやる。すると、彼女の隣に座っている人物から強い視線を感じた。
エルヴィンは少し楽しげに口角を上げ、彼へ目線を移した。
「リヴァイ、どうかしたか?」
じっとエミリの頭に置いてあるエルヴィンの手を睨みつける兵士長に声を掛ける。リヴァイはチラリとエルヴィンを見てからふっと視線を外し窓の外へ顔を向けた。
「別に、何でもねぇよ……」
嘘をつけと突っ込んでやりたいが、未だに自分の気持ちに気づいていない彼をからかっても仕方が無い。
不思議そうに自分の上官を交互に見るエミリを放って、エルヴィンは彼女の頭から手を離した。