Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「三兵団合同会議って、マジで……?」
「マジだけど?」
各組織のトップが集まる重要な会議。それに参加するなど調査兵団ではエルヴィンとリヴァイ以外、よっぽど仕事ができる者でなければ無理だ。
つまり、会議に参加が認められたエミリはそれだけ評価が高いのだろう。
「ちなみにさ、それってどうやってお前って決まったんだ?」
「なんかハンジさんの推薦らしいよ」
「へ、へぇ……」
サラリと答える幼馴染に、フィデリオはどう反応していいかわからなくなる。
頭を使うことの方がエミリは得意だ。それはフィデリオも当然知っていたが、まさかここまで仕事ができる奴とは思っていなかった。
「…………ま、薬剤師試験受けるような奴だもんな」
そうボソリと呟いた声は、少しだけエミリには届いていたようで、『どうかした?』と聞き返される。ハッキリは聞き取れていないようだ。
フィデリオは何でもねぇよと返事をして、シチューを食べることに専念した。
(いや、ちょっと待て……)
スプーンを動かす手をピタリと止めて、目の前でパンを頬張るエミリをチラリと見る。
(これってチャンスなんじゃね?)
会議に参加するということは、その日エミリは不在となる。
それならば、わざわざ彼女の目を盗んでコソコソする必要はなく、昼間の件についてペトラとオルオに話すことができる。
「なあ、エミリ」
「んー?」
「会議っていつなんだよ」
「二週間後だって。ああ、その日は宿に泊まるみたいだから、まる一日私いないからね」
なんと嬉しい情報だろう。フィデリオは心の中で拳を作り喜ぶ。
さて、どう話そうか。
視線をエミリから隣へ寄越せば、未だにブツブツ文句を言うオルオとそんな彼に辛辣な言葉を放つペトラとで、夫婦漫才が出来上がっていた。
「あと……」
「どした?」
「……場所は、トロスト区の駐屯兵団だって」
「え、それもマジ?」
コクリと無言で頷くエミリ。フィデリオはまずいな……と頭を搔く。
要は面倒な奴らと遭遇しなければいいのだが……
これ以上彼女の身に何も起きないことを祈って、フィデリオはシチューを口に運んだ。