Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
夕食、いつものメンバー四人で食事をしていた。
話題は今日の訓練のことや同期、先輩達の面白おかしな話ばかりだ。
「そういや、エミリが二ファさんに呼ばれたアレ、結局何だったんだよ?」
パンを口に運びながら、フィデリオが昼間の出来事を思い出す。
「ああ、エルヴィン団長に呼ばれて、団長の執務室に行ってたの」
「え、団長に?」
今度は一体何の話だとペトラが首を傾げる。
以前、エミリがエルヴィンに呼び出される度に、まさかエミリが何かやらかしたのだろうかと不安に駆られるペトラだったが、今はもうそんなことは思わない。
新兵の頃と比べてエミリとエルヴィンの関係はどんどん深くなっているからだ。
上司と部下、その距離間は忘れずにどこか仲の良い親子のような、そんな感じがする。
ペトラがそう思うのは、最近はエミリが自分からエルヴィンに話しかけたり、勉強を教えて貰ったり、遠慮なく団長である彼に対してツッコミを入れたりする姿を見ているからだ。
そしてエルヴィンもエミリのことを何かと気にかけたり、勉強に関しては微笑ましく彼女の成長を見守っていたり喜んでいたり、たまにエミリの頭を撫でている場面に遭遇したりと可愛がっている様子が見られる。
「……もしかして、何か仕事を頼まれたとか?」
「え、何で分かったの?」
やはりか、とペトラは微笑む。
本当にエルヴィンがエミリを娘のように思っていたとしたら、彼女のことを信用していると考えていい。
だから、大切な仕事を頼んだっておかしくはないだろうと推察した。
「それで、何の仕事を頼まれたの?」
「三兵団合同会議の書記をやってほしいって」
「はぁ!?」
エミリのトンデモ発言にオルオが声を上げる。そんな彼の大きな声に顔を顰めたペトラは、『オルオ! うるさい!!』といつものように怒鳴る。