• テキストサイズ

Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第14章 傷跡




「ねぇ、エミリ」


執務室を後にし、ハンジとモブリットが仕事しているであろう研究室へ戻る最中、二ファが足を止めエミリを引き止めた。


「はい? 何でしょう?」

「あんまり無理しちゃ駄目だよ?」


二ファの言葉に数回瞬きを繰り返し、エミリは眉を下げて微笑む。
彼女の言葉が何を指しているのかわかったから。
やはり自分は嘘をついたり誤魔化したりするのは苦手なようだ。エルヴィンにも確実に気づかれているだろう。


「……ありがとうございます。でも、大丈夫です」

「エミリの言う『大丈夫』は信じられないんだけどね……」

「えぇ……二ファさん、酷いですよ」


これまで無茶ばかりしていたエミリの行動の数々。正直、不安しかない。
エミリが橋から飛び降り重症を負った事件も記憶に新しい。


「本当に大丈夫ですから!!」


目の前でニコリと微笑む後輩は、どうしても話したくないようだ。
ただ一つ分かることは、その笑顔の裏に隠されいるのはきっと、エミリにとっての大きな”傷”。


「……わかった。そんなに言うなら何も聞かないよ。でも、本当に辛い時は……私でなくてもいいから、必ず誰かを頼ってね。絶対に一人で抱え込まないで」

「はい!」


二ファの言葉に大きく頷くエミリだが、本当に彼女は分かってくれたのだろうか。伝わっただろうか。
例え分かっていたとしても、きっと彼女は無茶をするのだろう。そういう子だから。


「二ファさん、ありがとうございます!」


エミリはもう一度、自分を気にかけてくれる先輩に礼を言う。

二ファが気にかけてくれたことが、とても嬉しかったから。
自分をこうして支えてくれる人がいる。
心配してくれる人がいる。
それだけで、自分の身を案じてくれる人がそばにいると知っているだけで、エミリの心は本当に救われていた。

/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp