Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「では、よろしく頼むよ」
「はい!」
ハンジからの推薦だと話した途端、エミリの表情から不安が消えた。
そんなエミリの様子から、ハンジを強く尊敬していることが伺える。
「会議の日はそのまま宿で一泊する予定だ。荷物を準備しておいてくれ。場所はトロスト区の駐屯兵団だ」
「え」
大きくエミリの目が開かれる。それと同時にピクリと肩が揺れた。
「……えっと、三兵団合同会議はいつも王都の憲兵団本部で開かれるのでは?」
「ああ、いつもはそうだがあちらの都合がつかなくてな、会場が変わったんだ」
「そう、なんですね……」
エミリの心臓がドクドクと鈍い音を立てる。まさか駐屯兵団で会議が開かれるなど思っていなかった。
少しだけ息苦しく感じる胸を抑えて、ゆっくり深呼吸を繰り返す。
「エミリ、どうかしたか?」
そんなエミリの異変を感じ取ったエルヴィンが、心配そうに眉を下げる。
「い、いえ……大丈夫です!!」
慌てて顔を上げ、両手を胸の前でブンブンと振ってはなんでもないと主張する。
どこか必死な様子を見せる彼女に疑念を抱くエルヴィンだが、あまり聞かれたくない事なのだろうと察し、話題を変えた。
「……そうか。書記のことに関しては、二ファに指導してもらうといい。これまでは彼女に担当してもらっていたから、私が教えるよりも良いだろう」
「わ、わかりました……!」
何も聞いてこないエルヴィンに、エミリはホッと胸を撫で下ろした。
もし聞かれていたら、どう答えていいのかわからなくなっていただろうから。
「二ファさん、よろしくお願いします!」
「……うん!」
二ファも先程のエミリの様子が気がかりだったが、エルヴィンが何も聞こうとしなかったため、自分もそうした方がいいだろうと、そっと疑問を胸の中へ仕舞った。