Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「それがさぁ、ここのとこホントに毎日勉強しかしてなくてさ。非番の日だって、ずーーっと本と向き合ってばっかりなんだよ〜。だから、気分転換にさっ!」
果たして会議が気分転換になるのかは分からないが、逆に何かきっかけを与えなければエミリは休まない。そんな気がした。
「いいだろう。今回の同伴はエミリに任せる」
「了解。後で団長室に来るよう伝えさせるよ」
こうして、今回の会議の書記係はエミリが担うこととなった。
彼女を会議に参加させるのは今回が初めてだ。一応念の為に、ある程度の指導はさせておいた方が良いだろう。
それは二ファに任せるとして、実は今回、ハンジがエミリを推薦したのにはもう一つ思惑があったのだ。
紅茶を飲み終え、執務室を出て行くリヴァイを見送ったハンジは、耐えきれなくなりブッと笑いを零す。
「やはり、また何か企んでいたか……」
視線は書類に向けながら、エルヴィンが呆れたようにハンジへ言葉を掛ける。
今回もいつもと同じ、いらぬお節介だろう。
「だってさぁ! あのリヴァイが、一人の女に夢中になってるんだよ!?」
「本人はまだ自覚していないがな」
「そう!! だから、今回の事をきっかけに何か進展があったらなあって思うんだよね〜」
巨人を相手にする時のように頬を赤くさせ興奮するハンジの瞳は、面白い玩具を見つけた子供ようにギラギラと光っていた。
「ね、エルヴィン!! 何か面白そうなことがあったら絶対に教えてくれよ?!」
「気が向いたらな」
「くぅ〜〜〜滾るねぇぇ!!」
淡々と仕事をこなすエルヴィンの隣で一人勝手に暴走するハンジ。そんな彼女を回収しに団長室へ現れたのは、書類の束を抱えたモブリットだった。