Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
ある昼下がり、いつものように執務室で仕事をしていたエルヴィンの元に一通の手紙が届いた。
封を開け手紙に目を通していると、その手紙を届けにやって来たハンジが彼の隣から覗き込む。
「ああ、三兵団合同会議の連絡か! そう言えば、もうそんな時期だね」
三兵団合同会議──憲兵団、駐屯兵団、調査兵団の三つの組織のトップが集まり開かれる会議。内容はこれまでの活動連絡や今後の方針についてが主だ。そして、調査兵団にとっては資金調達にも関わる重要な会議である。
年に数回行われ、調査兵団では団長のエルヴィンと兵士長のリヴァイが必ず参加しなければならない。後はハンジ班から一人書記係を連れて行く。
ハンジ班の班員を選んでいるのにも勿論理由がある。他の班と比べて研究を主とするハンジ班の兵士達は皆、書類の整理や雑務の仕事が早い。会議の内容をまとめる能力にも長けている者が多いのだ。
「で、今回は誰に書記を任せる?」
そこに、ソファで紅茶を味わっていたリヴァイが、視線だけハンジに向けながら問いかける。
「そうだねぇ……」
基本的にいつもは二ファに頼んでいる。彼女には連絡係として他の兵団に行き来させることも多い。が、ハンジの中ではそろそろある部下に書記を任せても良いのではないかと考えていた。
「……エミリはどう? よく私達の仕事手伝ってくれるけど、あの子なかなかいい線いってるよ?」
調査兵団に所属してから一年半が経ち、新兵の頃と比べて格段に仕事ができるようになっている。勉強が得意なだけあって、書類と長時間向き合うのも問題無いようだ。
「ちょっと待て。あいつを連れて行くのは構わねぇが、勉強の方はいいのか?」
そこでリヴァイの脳裏に浮かぶのは、毎日一生懸命、机に向かって勉強するエミリの姿。
兵団のために、自分の夢を叶えるために、いつも訓練と両立させながら必死に頑張っている。
今回、会議に同伴させることで勉強の妨げにならないか、少し気になった。