Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
教えてもらった通りに問題を解いていくエミリ。そんな彼女を眺めるエルヴィンは昔の記憶に浸っていた。
人にものを教えることは割と得意な方だ。幼い頃は学校に通っていたため、友人に勉強を教えることも少なくはなかった。
父が教師だったこともあり、兵士を目指す前はそんな父に憧れを抱いていた時もあった。
だが、エルヴィンが兵士を目指すきっかけとなったのはその憧れの父の仮説だ。それを聞いたエルヴィンは、すぐに人類、巨人の謎に興味を持った。そして、いつかそれを証明することが、エルヴィンの夢となったのだ。
その夢を胸に兵士を志願し、ただひたすら己を鍛え調査兵団へ入った。そして、いつの間にやらエルヴィンは団長にまで上り詰め、それからは多くの仲間を犠牲に巨人と戦い続けてきた。
ただ、その夢のために。
『私に……薬剤師試験を受けさせて下さい!!』
一ヶ月ほど前、そう言ってエルヴィンに頭を下げたエミリの言葉を思い出す。
あの時の彼女の瞳は真剣そのもの。薬剤師という夢の存在がどれほど大きいかを物語っていた。
夢が自分にどれだけ大きな影響を与えてくれるものか、エルヴィンはよく理解している。だから、エミリの気持ちに強く共感できた。
勿論、そんな甘い考えで彼女の受験許可を出したわけではない。
エミリが薬学の知識を増やし、技術を磨いてくれれば、一人でも多くの兵士を救うことができるだろうと考えたから。
部下達はエルヴィンにとって大事な”駒”だ。その駒が一人でも多いに越したことはない。
こんな話を聞けば、きっと皆はエルヴィンを非情だと声を上げるだろう。既に、悪魔などと呼ばれたことはある。何度も。
だけど、それでも構わない。
夢を叶えるためなら悪魔でも何にでもなってやる、と。
エルヴィンにとってもエミリは大事な駒だ。しかも、他の部下達とは違う特別なもの。