Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
夏もいよいよ大詰。8月が終わろうとしていた今日この頃、スケジュール表を前にエミリは項垂れていた。
「…………どうしよう」
頭を抱えながら教材を手に取りあたふたしている様子は、周りから見れば気が狂ったおかしな女である。
開かれたノートに、本屋で購入した参考書たちは色とりどりの付箋が挟まれており、風に吹かれる度に小刻みにひらひらと揺れている。そんな本の表紙はボロボロになりかけていた。
それはエミリがそれらを買ってから毎日毎日ページを捲り使い続けた証拠だ。
つまり、それだけ勉強したのに、だ……当初予定していた範囲まで進まなかったということである。
「あああ! 明日から9月なのに!!」
このままでは試験までに間に合わない。ただでさえ時間が限られているというのに。
「……睡眠時間少し削る? でも、そんなことして訓練に支障が出たら……じゃあ、自主練の時間を減らす? ダメだ……四人の中で私が一番ビリなのに……」
この遅れをどうやって取り返せばいいだろう。机に突っ伏し考えるも、良い勉強法も出てこない。というか、こうしてグダグダ考えている時間があるなら単語の一つや二つくらい覚えられるだろうに。
「うぅ……」
やる気も出てこない。代わりに焦りがエミリの心を覆う。誰か自分を救ってくれる救世主はいないのだろうか。
「エミリ、大丈夫か?」
「っ!」
掛けられた声にエミリはバッと状態を起こす。目の前に立っていたのは珍しく私服のエルヴィンだった。
「……エルヴィン団長」
「随分と参っているみたいだな」
「課題が……課題が進まなくて困ってるんですよ〜〜!!」
ああ、涙が出てきそうだ。というか、既に目の端に小さく水が溜まっている。
嘆き項垂れるエミリの頭に手を置いたエルヴィンが、そうかと苦笑いを浮かべる。
「エミリ、今君が取り組んでいる課題を見せてくれないか?」
「え……あ、はい……」
机に積んであるテキストとついでにノートをエルヴィンに手渡す。それらを受け取ったエルヴィンは、ノートや参考書の中身に目を通し何やら考えているようだ。
そんな彼をぼーっと眺めていると、「成程、そういうことか」と呟くエルヴィンの言葉にエミリは首を傾けた。