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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第13章 勉強




「出会った頃、か。誰にも気を許さない、という感じだったな。いつもあの二人と共に行動していた」


冷たく暗い世界で生まれ育ったリヴァイは、あの頃は今以上に警戒心も強かっただろう。
だけど、あの二人──ファーランとイザベルは、リヴァイにとって仲間でもあり、家族のようなものだったのだろう。地下街という過酷な環境で苦楽を共にし、生きてきた大切な存在だった筈だ。

残酷な世界にある、彼の唯一の安息の場。それが、ファーランとイザベルが居た場所だったのかもしれない。


「……その二人を失ってから調査兵団に残ると決めたが、それでもあいつは変わらず誰かに気を許すことは無かったな」


リヴァイは地下街で窃盗を繰り返していた犯罪者だ。当時、彼を認めない兵士は数多くいた。勿論、陰口が飛び交うばかり。
そんな連中とリヴァイの気が合うわけがない。彼自身も馴れ合うつもりなどなかったのだろう。

なのに、いつの間にか彼は兵士長を務め人類最強と呼ばれるようにまでなった。その辺りからか、リヴァイの存在が受け入れられるようになったのは。


「なら、今は?」

「部下を率いる兵士長、だな」


疎まれていたリヴァイは、いつの間にか多くの部下達から憧れや尊敬の念を抱かれるようになっていた。そして、他人と距離を置いていたリヴァイも今ではすっかり調査兵だ。


「……そうだね。皆に慕われているリヴァイは入団当初と全く違う。でも、だからこそ私達は彼の心に空いた穴を埋めなくてはならないんだよ」


人類最強。それは良い響きに聞こえるが、本人には相当なプレッシャーだ。
リヴァイをそんな大きな存在にさせたのは、彼を調査兵団へ連れてきたエルヴィンであり、彼に期待をかける兵士達だ。だから……


「私達はリヴァイが失ったものを取り返さなくてはならない。それが我々の役目であり責任なんだ」


これからもリヴァイを最強として戦わせていくために、彼を支えるのがハンジ達の役目。彼を調査兵団に留めた者達の責任なのだ。
そのためにはまず、失った安らぎを彼の心に取り戻さなくてはならない。


「その存在がエミリだと言いたいのか」

「そう。リヴァイはもうあの子に惚れてるよ。本人が気づいてないだけでね」


リヴァイがそれに気づくのはいつだろうか。そして願わくは、その想いが彼女に通じて欲しいとハンジは密かに祈った。

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