Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
「相変わらず、お前は部下に無理難題を押し付けてばかりだな」
ハンジが食堂を出ると、ミケが壁に背を預け立っていた。ハンジとエミリの話を聞いていたのだろう。
「盗み聞きとは、あんたも良い趣味してるね」
「お前にだけは言われたくないな」
そう言ってスンと鼻を鳴らす大男に、ハンジは心外だなぁと腰に手を当て講義する。しかし、ハンジの普段の行いを見ているとミケの発言も仕方が無いと言える。
「エミリ、困ってるんじゃないか?」
「何で?」
「お前が変なことを言ったからだ」
「ああ……」
エミリにリヴァイのことを頼むとハンジが頼んだ事をミケは言っている。だが、ハンジは自分の発言に特に気にしていないようだ。
「ん〜じゃあさ、ミケに一つ聞いていい?」
「答えられる質問だったらいいがな」
「全く、皆して酷くない? 私のこと何だと思ってるの?」
「巨人が大好きな奇行種だろう」
「ああ、そうかい」
真面目に答えているのか、それとも冗談なのかわからないミケの返答に、ハンジは肩をすくめる。これ以上話を逸らす訳にはいかないため本題に入った。
「リヴァイの顔を泥水に突っ込んだのってミケだったんでしょ?」
「……ああ、あいつを捕らえに地下街へ行った時のことか」
リヴァイとその仲間の立体機動の腕を見込んだエルヴィンにミケも同行した。今は仲間だが、あの時は敵としてリヴァイと刃を交えた。
もう三年以上も前になるのに、何だか懐かしく思える。
「で、それがどうかしたのか?」
「あの時のリヴァイ……彼の仲間が隣に居た時のリヴァイは、ミケからしてどんな印象を持った?」
「印象、か……」
まさかの質問に、ミケは少しだけ戸惑う。あの頃から三年以上も経っているのだ。正直な感想はあまり覚えていない。
だが、小柄な割にはずば抜けた身体能力を持ち、立体機動の腕もセンスがあるなと思ったことだけは覚えている。
実際に交戦して素直に彼は強いと感じた。彼は本当に大きな実力の持ち主であるということ。
だが、ハンジが聞きたいのはそういうことではない。強さではなく、ミケから見たリヴァイはどんな人間だったか、ということだ。