Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
「あ、いたいたーー!!」
そこへ食堂に響き渡る奇行種の声。リヴァイはグラスを持つ手をピタリと止めて眉間に皺を寄せる。
「やっと見つけたよ〜〜今日こそは聞いてもらうよっ! 巨人の話!!」
「チッ……」
ムフフと不気味に笑うハンジの登場に、リヴァイは心底面倒臭そうな顔を見せる。そんなリヴァイにエミリは苦笑を漏らしながら、ハンジに軽く会釈する。
「あれ、エミリも一緒だったの?? ふ〜ん……」
「何だクソメガネ」
リヴァイとエミリ、二人の顔を交互に見ながらハンジはニヤニヤと顔を緩ませている。
「別に何でもないさっ!」
そう言う割には絶対に良からぬことを考えている顔をしている。
最近、リヴァイにエミリが絡む話にハンジは敏感だ。茶化すような視線を送ってくる彼女に苛立ちすら覚えるが、構うだけ無駄なため放っている。
「じゃ、早速この間の研究の話を」
「おいクソメガネ。俺はてめぇの話聞くなんて一言も言ってねぇ」
「えーー!!」
こんなやり取りもいつもの事だし、ハンジの長い巨人話に付き合わされたくない者はリヴァイ以外にも沢山いるというのに、今更何だそのリアクションはとリヴァイは鬱陶しそうに溜息を吐いた。
リヴァイはそのまま席を立ち、執務室へ戻るため食堂の出入口へ歩いて行く。
「え、ちょっと!!」
「俺は仕事に戻る。それから、エミリの邪魔だけはするんじゃねぇぞ」
「心外だなぁ。流石にエミリの勉強妨害なんて私もしないよ」
「どうだかな。……エミリ」
「あ、はい」
「……頑張れよ」
最後にそう言って、リヴァイは食堂を出て行った。
エミリは彼が行った方を口を開けポカンと眺めていた。まさか、頑張れなんて言われると思っていなかったから。
「リヴァイってば、ホントにエミリに優しいよね」
「……え」
ハンジはエミリの前へ腰を下ろす。そこはさっきまでリヴァイが座っていた場所だ。
「リヴァイ、ずっと貴女のことを気にかけているよ。同時に、君に感謝してるんだ」
「…………感謝って……」
自分はリヴァイに何をした?
感謝されるような事はしていないはずだが……
表情を強ばらせるエミリに、ハンジはクスリと微笑んで口を開いた。