Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
「受かるか受からねぇか、それはお前次第だ」
手元をじっと見つめたままのエミリに、リヴァイが静かな声で言い聞かせる。
「わたし……?」
「時間は人を待たねぇ。なら、その時が来るまでに、やるべき事をやるしかないだろ」
「……やるべき事……」
エミリは顔を俯かせる。
リヴァイが言っていることは正しい。それを理解したから、何も言葉が出なかった。
「エミリよ」
「……はい」
「お前がしたいことは何だ?」
何故、今になってそんな当たり前の質問をするのだろう。リヴァイの真意は解らないが、エミリは自分の思いを言葉にして答える。
「それは……薬剤師になって、皆を助けたい…力になりたい、です」
「そうだ、お前の夢は試験に合格することじゃねぇ。
試験ってのはただの通過点でしかない。お前が本当にやりたいことは、その先にあるんだろう。だったら、こんな所で立ち止まってる場合じゃねぇだろう」
リヴァイの言葉にエミリは顔を上げる。それと同時に心を覆っていた不安が一気に晴れた。
「……兵長」
「ったく、お前は前向きなのかそうじゃないのか、わかんねぇ奴だな」
落ち込んでいると思ったらすぐに立ち直って笑顔になるのに、時々不安な気持ちが勝って下を向いている。
たまに扱いにくいと思うこともあるが、それもエミリの魅力の一つなのだろう。そんな彼女だから、きっと放っておけない。
「兵長、ありがとうございます!」
リヴァイの言葉で復活したエミリの顔には笑顔があった。
やっぱりエミリが解らない。
そして、彼女と居るだけで心を支配する感情の正体も解らない。
共に過ごす時間が増える度に、その感情はどんどん大きく膨らんでいく。執務室で一人、仕事をしている時だって、気づいたらエミリのことを考えている時だってある程だ。
この間、エミリとファウストの墓に行った時も、死んでも彼女に思われている彼が『羨ましい』と思った。
その時に感じた気持ちと同じ感情が募る度、リヴァイの戸惑いも少しずつ大きくなっていた。