Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
「……お前、また無理してねぇだろうな?」
「してないですよ。というか、『また』ってなんですか!!」
ぷくりと不満げに頬を膨らませるエミリだが、これまでとんでもない無茶をしでかしてばかりだったのだ。文句くらいは言わせてほしい。
「してないって割には、最近机に向かってるお前しか見てねぇ気がするが……」
「だって、時間が限られてるんですもん。言っときますけど、6時間の睡眠はちゃんと取ってますからね!」
「……そうか」
その返事に一先ず安堵。これで徹夜で勉強しているとでも言われたら、今日は無理矢理休みにでもさせようと思った。
「そう言う兵長こそ、ちゃんと寝てるんですか? いつも書類に追われてるじゃないですか」
「…………」
「何も言わないってことは、睡眠取ってないんですね。人のことを言う前に、まずはご自分の心配をなさって下さい!」
それはこっちの台詞だ。そう言い返したかったが、彼女の言い分も間違ってはいないため反論できない。
「チッ」
「いま舌打ちしました?!」
「うるせぇ」
エミリの大きな声に、リヴァイは顔を顰める。
そんな彼の返事に「もういいです!」とぷいと顔を逸らしたエミリは、再びノートに視線を戻し手を動かした。
カリカリとペンがノートを滑る音が二人の間に響き渡る。
リヴァイはチラリとエミリを盗み見た。本と向き合う彼女の表情は真剣そのもの。エミリにとっての薬剤師という夢が、彼女の中でどれほど大きな存在かその顔を見ただけで分かる。
暫くエミリを眺めていると、ピタリと音が止んだ。ペンを動かしていた音だ。
「……リヴァイ兵長」
リヴァイを呼ぶ声は、小さくて弱い。
そこから感じられるのは、不安。
「何だ」
「……試験、受かりますかね……」
考えない様にはしているが、それでも時々、ふとした瞬間に頭に浮かぶ悪い結果。それがエミリの心を曇らせていた。
自分でやると決めたからには、勿論、最後まで諦めたくは無いし、合格したいと思っている。だけど、努力すれば必ず結果が伴うわけではない。
その辛さをエミリは知っているから、少し怖かった。