Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
夏真っ盛りのとある午後。食堂で勉強をしていたエミリはぐったりと机に伏せていた。
理由は勿論、暑さのせいである。窓から差す太陽の光のせいで、室内の温度は上がるばかり。
「……暑い……喉乾いた」
昨日はそれ程暑くはなかったのに、どうして今日はこんなにも暑いんだ。何度目かわからない文句を零す。こうまで暑いとやる気が出ない。この猛暑が全てエミリのやる気を奪っていた。
「……冷たい飲み物が欲しいよ〜」
キンキンに冷えた水が欲しい。ジュースだと余計に喉が乾くから。とにかく潤したい。
顔を突っ伏しながらぶつぶつ独り言をしていると、コトリと机に何かが置かれた音がした。
それに反応して顔を上げると、目の前にあったのはグラス。
「……これは」
「随分へばってるな」
「え」
頭上から降ってきた声。その主に視線を寄越すと同じグラスを持ったリヴァイがエミリを見下ろしていた。
「兵長!? え、あの……これは、一体……」
目の前に立つリヴァイと机に置かれたグラスを交互に見ながら説明を促す。
「たまたま通り掛かったら、お前のだらしねぇ姿が見えたからこうしてわざわざ紅茶入れてやったんだろうが」
「そ、そうだったんですね……ありがとうございます。では、頂きます」
挨拶をしてグラスを持つ。ひんやりとした感覚が手から体全身に伝わりとても心が癒される。気温も下がってくれないだろうかと無駄な願い事まで生まれてくる程に。
「この紅茶、美味しいですねぇ」
「当たり前だ。誰が淹れたと思ってる」
紅茶愛好家のリヴァイが淹れたアイスティーはなかなかの味だ。
ジュースほど甘すぎないほろ苦い味と冷たさが味覚を刺激し、どんどん怠さを無くしていく。
「で、勉学の方はどうだ?」
「あ〜〜まあ、ぼちぼちってとこですかね……自分なりに頑張ってはいますけど……」
薬学の勉強を始めて1ヶ月が経とうとしていた。毎日毎日、訓練と両立しながら勉強に取り組んでいるがなかなかキツい。
いつの間にか寝落ちしている事だってある。最初の頃は特にそれが多かったが、最近は滅多にない。今の生活スタイルが身についてきた証拠だろう。