Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
早朝。4時が過ぎた頃、勉強道具一式を持ったエミリは食堂に居た。
兵舎の部屋では相部屋の同期や後輩達が眠っているため、灯りをつけると睡眠の邪魔になってしまう。かといって、上官のように個室や仕事部屋があるわけでも無い。
最終的に、朝早くから仕込みを始めている食堂に行き着いた。ただ静かに座って勉強しているだけなら全く問題無いと、兵団の料理人からも許可を貰った。
冷たい水で顔を洗ったお陰で目はパッチリ。まだ少しだけ眠いが、この習慣も続けていく内に慣れていくだろう。
眠気覚ましに頬をパチンと叩いたエミリは、早速本やノートを開いて筆を持った。
「まずは基礎から……」
一つ欠伸をして、参考書の文字を目で追っていく。しかし、それだけだと眠くなっていくので、内容をノートに纏めながら。
試験は一次、二次、最終試験から成っている。
一次と二次試験は筆記試験、最終試験は実技で行われる。
一次を通過すれば二次、更にそれを通過すれば最終試験、そしてそれに合格すれば晴れて薬剤師の仲間入りだ。
正直、試験までに間に合うかどうか分からない。院長からも追い打ちをかけられるように、『受験勉強に完成はないからね』と言われた。気が遠くなりそうだ。
「……あ、もうすぐ6時だ」
本から顔を上げ時計を確認すると、6時まであと10分だった。
今日もこれまで通りペトラ達と鍛錬をするために、勉強道具を抱え部屋に戻り運動着に着替えた。
中庭へ急ぐと既に三人揃って眠たい目を擦りながら話をしている。
「遅れてごめん!!」
「おはよう、エミリ。大丈夫だよ!」
謝りながら三人の元へ駆け寄ると、ペトラが笑顔で応えてくれる。
「ったく、遅せぇよ!」
「仕方ないでしょ! エミリは勉強のために4時に起きてたんだから!!」
「は? 4時!?」
文句を飛ばすオルオに、ペトラが腰を当ててエミリをフォローする。そして、そんな二人の隣で大きな欠伸をしていたフィデリオが信じられないといった顔でエミリを凝視した。
「お前、よく4時に起きれるな」
「あんたは早起き苦手だもんね」
「ちゃんと寝ろよ?」
「22時に寝るから大丈夫」
エミリはそう言うが、本当に大丈夫なのだろうか。いつも無茶しかしないため、正直、彼女の大丈夫は信じられない。