Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
今日もあっという間の一日。
外は月の明かりだけが街を薄暗く照らしている。時計の針はもうすぐ10を示そうとしていた。
「あれ? エミリってばもう寝るの?」
「うん」
二段ベッドの上でシーツを敷き、布団と枕をセットするエミリに、同期の女の子が声を掛ける。
この時間はいつも、訓練を終えたまだまだ若い女兵士達が女子トークを開いている。
現在この部屋は、エミリとペトラ以外に彼女らと同期の二人と一期下の後輩達が使用している。
男子禁制の乙女の花園で盛り上がる内容は殆どが恋愛やお洒落について。兵士とはいえまだ15、6歳の彼女達からすれば、夜の雑談会は貴重な時間なのである。
「今日こそエミリの初恋について聞いてやろうと思ったのに〜」
「だから、私の話なんて面白く無いから……」
「ほらほら、その話題はもうお終い!」
何度目か分からない同じ質問にムスッと顔を歪めるエミリを見たペトラが話題を逸らす。
入団して仲良くなってからは、皆でお互いの恋愛について教え合うことが多かった。ただその中で、エミリだけはどうしても話す気になれず、いつも聞いても面白くないからとはぐらかしていた。
実際、内容はかなり重い。と、自分でも思っているくらいだ。話せるわけがないし、話すことによって気を使わせたくなかった。唯一、事情を知っているペトラだけがいつも誤魔化してくれる。本当にペトラには感謝だ。
「いつか絶対聞いてやる〜」
「ハイハイ、ガンバッテネー」
棒読み片言で適当に返したエミリはそのまま布団に潜る。明日からは4時起きだから早く寝たかった。
「エミリさん、寝るの早いですね」
「朝、早く起きて勉強するんだって」
「へぇ、張り切ってますね!」
「今から頑張りすぎて、試験前に倒れちゃったりしてねぇ」
「あ〜エミリならやりそう!!」
「もう! そんなにポンポン言わないでよ!!」
ガバッと状態を起こして二段ベッドの上から怒鳴れば、「あ〜怖い怖い」と流す同期二人。
「ホントに寝るからね!」
「はーい、おやすみ〜」
可笑しそうに笑っている二人を一瞥して、エミリはもう一度横になって布団を被った。