Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第3章 入団
「ねぇ、エミリはどうして調査兵団に入ったの?」
「え?」
食堂へ向かっている途中、ペトラに質問されたエミリは、少し目を丸くした。
「調査兵団に入ろうって人、なかなかいないでしょ?」
「それを言うならペトラだって」
「うん。私はね、リヴァイ兵長に憧れて……」
「リヴァイ兵長に?」
ペトラの動機から思い浮かぶのはフィデリオの顔だった。彼もまたリヴァイに憧れて調査兵団に入団した一人だ。
「そう。まだ直接、兵長の戦いぶりを見たわけじゃないけど、一度に何体もの巨人を倒してしまうなんて、すごいなぁって……兵長の強さに憧れているの」
「そっか。………私はね、シガンシナ区出身なんだ」
「え。シガンシナ区ってことは……」
「うん。あの日、"あの"光景を見てしまった……」
「そんな……」
エミリの話に、ペトラはショックを受けたような顔をする。ペトラは、あの日の惨劇を目の当たりにした訳ではないが、話に聞くだけでも随分と悲惨なものだった。それを実際に体験したということは──
「じゃあエミリは、全てを知った上で調査兵になったの?」
「……戦わなきゃ、誰かがやらなきゃいけないと思ったから。強く、なりたくて……」
そうでなくては、また何も守れないままだ。
無力な自分には、もうなりたくなかった。
戦わなければ、勝てない。
「それに、絶望だけじゃないことを知ったから」
「え?」
「私、あの日、リヴァイ兵長に助けてもらったことがあるの」
「えぇ!?」
先程の入団式で、リヴァイはエルヴィンの後ろで腕を組んで立っていた。遠くから見ても分かった。
あの時の黒髪と鋭い三白眼は全く同じものだった。