Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「エミリ〜どこ行ってたの? いつもは仕事手伝ってくれるのに」
「すみません、ハンジさん。ちょっと、街に用事があったので……」
そこでハンジは、エミリが抱えている茶色の封筒の存在に気づく。中身が気になりソファから立ち上がるとエミリの隣へ移動する。
「エミリ、その封筒は何?」
ハンジが問いかけると、スッと封筒を差し出された。
「……えっと、見てもいいの?」
「はい」
仕事に関する大切な書類なのだろうか。それならば、ハンジに見せる前にエルヴィンに渡すはずだ。では、これは一体何だろう。
ハンジは封を解いて中身を取り出す。そこには数枚の紙と二冊の冊子。そして、それの表紙に書かれてある文字に目を通したハンジは、驚きのあまり思わず声を上げた。
「チッ、うるせぇな……」
キーンと耳に響くハンジのドデカい声に、リヴァイは眉を顰める。
「ちょっと……エミリ、本気!?」
「本気です」
一体、その封筒の中身は何について書かれた資料だったのか。二人の会話について行けず、リヴァイとエルヴィンは顔を見合わせる。
「おい、お前らだけで盛り上がるな」
「あ、すみません……」
苛立ちを含んだリヴァイの様子に、エミリは咄嗟に謝る。そして、一歩前へ進み背筋を伸ばす。エルヴィンを真っ直ぐと見据え、エミリはゆっくりと口を開いた。
「……エルヴィン団長、お願いがあるんです」
「お願い?」
真剣なエミリの表情。覚悟を決めた、強い何かを感じる。
エルヴィンは黙って次の言葉を待った。
「私に……薬剤師試験を受けさせて下さい!!」
エミリの"お願い"が想像していなかったもので、リヴァイは思わずエミリを凝視した。エルヴィンは大体検討がついていたのか、顎に手を添え何やら考え事をしている。
「勿論、兵士としてです! 訓練も今まで通り続けますし、壁外調査だって参加します!! 勉強は、自分で時間を見つけてやります! だから……お願いします!!」
そこまで言い切り、勢い良く頭を下げる。そんなエミリを目に映しながら、エルヴィンは問いかける。