Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
壁外調査を終え二日が経った。
リヴァイは書類の束を手にエルヴィンの団長室へ足を運ぶ。
調査の後はこうして書類に終われ、今も寝不足だがこれも仕事だから仕方が無い。
「エルヴィン、入るぞ」
扉の向こうに居るであろうエルヴィンにノックをし、返事を待たずに中へ入る。目に入るのは、いつものように机に向かって筆を走らせるエルヴィンの姿。そして、
「やっほーリヴァイ!」
「てめぇ、こんなとこで何してやがる」
ソファに腰掛けるハンジが片手をひらりと上げて、今日もにこやかに挨拶を送る。
勿論、分隊長である彼女にも仕事は山積みのはずだ。またモブリットに押し付けて来たのだろうか。
「そんな顔しないでよ! ちょっと疲れたから、休憩してるだけだって。息抜きだよ」
一番仕事量が多いエルヴィンの前でよくそんな呑気な事ができるなと、ある意味で関心する。
リヴァイは書類に視線を固定したままのエルヴィンに同情した。
「ハンジのこれはいつものことだ。放置しておくのが一番だ」
「ちょっとちょっと、そんな言い方しなくてもいいだろ〜! ねぇ、リヴァイ!」
リヴァイに同意を求めるハンジだが、リヴァイはそれを無視してハンジが座るソファを横切りエルヴィンに書類の束を渡す。
「え、無視?」
相変わらずハンジには冷たいリヴァイ。いつもの事だが少しは話に付き合ってほしいと思う。
「てめぇはさっさと自分の執務室に戻って仕事しろ」
「やるってば! これは休憩だって!!」
「お前よりも班員の方が仕事してる様に見えるがな」
団長室に来る最中、ハンジの班員達が書類を持ちながら廊下を往復しているのを見た。
そういえば、紙を手に難しい表情をして歩くエミリの姿も見かけた。
あいつもハンジに振り回されているのだろうか、頭の隅でそんなどうでもいい事を考える。
「あ、班員で思い出したけど……今日さ、エミリ見てない?」
ハンジの言葉に、リヴァイは扉を開けようとした手を止める。
「エミリに何か用でもあるのか?」
「いや、別に用って程のことじゃ無いけどさ。あの子、調査後はいつも私の仕事手伝ってくれるんだけど……」
兵士の中でもまだまだ下っ端のエミリに仕事は無い。だが、いつもどうせ暇だからとハンジやモブリットらの仕事を自ら手伝いに来ていた。