Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「あの、兵長……」
「何だ」
「……負傷者の方々は、どうなりました?」
途中、目を覚ますことなくエミリはずっと眠っていた。自分があの場から離れてからのことは勿論知らない。とても気になる。
「それに関しては心配しなくていい」
「え、それって……」
そのままリヴァイと共に民家を出る。
暗い家の中と違い外の方が少し明るくて、寝起きのせいか眩しくエミリは目を細める。
「あいつらなら、あの通り元気だ」
リヴァイが目に映しているものへ視線を向ける。そして、その先にある光景に、エミリは大きく目を見開いた。
横たわっていた何人かの兵士は、歩ける程に回復していた。骨折や打撲等で体の部位を負傷した者達も、顔色も良くなっており、仲間と笑顔で会話している。
それを見たエミリは、ギュッと胸が締め付けられるような感覚を覚えた。それは、嬉しさから生まれたもの。
「……わたし、少しは兵団の役に立てましたか?」
「ああ。十分な」
一つ、涙が頬を伝う。
今まで、ずっと探していた『自分にしかできないこと』。やっと、見つけたかもしれない。
「エミリ、自信を持て。お前の力は、必要とされている」
「……は、い……」
「おい、何泣いてる」
嬉しかった。兵団の力になれたことが、リヴァイのその言葉が。
(……良いかな? 自分を信じても)
自分に才能が無いことは、もうずっと前から気づいている。
今回のことだって、幼い頃に勉強したことがたまたま役に立っただけだろう。
だけど、エミリを取り巻く沢山の人が、『自分を信じろ』と言ってくれた。
自惚れになるかもしれない。
でも、皆が言ってくれたように、自分を信じたいと思った。
(もし、信じても良いのなら……もう一度、目指してもいいかな?)
小さい頃から見つめ続けていた、私の夢を……───