Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「…………何で寝室?」
訳が解らずポツリと疑問を呟く。リヴァイはそんな彼女を放置して引き出しの中を漁り、綺麗なシーツをベッドの上に敷いている。
「エミリ」
「ふぇ!?」
またもや腕を引かれたと思いきやベッドの上に投げられる。変な声が出たがそんなこと気にしていられない。
「へ、兵長、いきなり投げないで下さい! 酷いですよ!」
「うるせぇ。いいからお前はさっさと寝ろ」
「寝ろって言われましても……」
まずどうしてこんな場所に連れてきたのか理由を説明してほしい。
エミリの言いたいことを察したのか、リヴァイは椅子をベッドの隣に置いて腰掛ける。
「お前、ここに着いてから休んでねぇんだろ?」
「……ああ、そういえば」
それすらも自覚していなかったのか。リヴァイは呆れから溜息を吐く。そして思った、気づいて良かったと。もしリヴァイが気づかなかったら、エミリはずっとあの場で負傷者の看病をしていただろう。
「馬鹿が。あのまま休まずに壁内へ戻るつもりだったのか。寝不足で巨人に食われたりでもしたらどうする」
「そ、それは……」
「怪我人の看病も大切かもしれねぇが、お前が生きてなきゃ意味ねぇだろうが」
「…………」
「エミリ」
「……はい」
「お前はもっと、自分を大切にしろ」
「……!」
その言葉にエミリは勢いよく顔を上げた。自分のことなど全く考えていなかったことに、言われて気づいた。
とにかく、薬を作ることや負傷者の介抱に必死で、自分のことを疎かにしていた。だけど、正直そんなことどうだって良かった。少しでも、彼らの苦しみを和らげることが出来るならと思っていたから。
「お前はいつもそうだ」
思い出すのは、エミリが橋から飛び降りた時のこと。あの時と比べれば、今回の方がまだマシかもしれないが、己の身を削っていることに変わりはない。
「……すみません」
「そう思うなら、少しは自分を労れ。もう寝ろ」
ベッドの上で正座しているエミリの肩に手を添え、優しく横たわせる。その数秒後、エミリはうとうととしながら瞼を閉じた。
「やっぱり疲れてたんじゃねぇか」
そして自身のマントを掛けてやる。あどけない顔で眠るエミリの頬を一撫でし、リヴァイは寝室を後にした。