Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「おい、エミリ」
「っ! リヴァイ兵長!?」
突然リヴァイに声を掛けられたエミリは、驚いてお玉を回す手を止める。
「な、何でしょうか……」
「薬、あとどれくらいで出来る?」
「……あ、えっと……一応、一通りは終わりました。予備の薬も作りましたし」
「今かき混ぜているやつは?」
「あ、これは出発前に飲んでもらいたい分です。丁度、完成したところです。あとは、皆さんの状態を細かく紙に記しておこうと。壁内に戻ってから病院で診察する際に必要ですので」
「……そうか。なら問題ねぇな」
「へ?」
一通りエミリの話を聞いたリヴァイは、彼女の腕を掴み立たせる。勿論、突然そんなことをされたエミリは困惑状態だ。
「あ、あの……兵長?」
「お前ら、今の話聞いてただろう。こいつが言っていたように、お前らは負傷者の様子を書き記しておけ。エミリ、お前は俺と来い」
「は、はい!?」
「ハンジ、この場のことは任せた」
「はいは〜い!」
エミリの腕を引いて歩くリヴァイ。エミリは益々訳が分からなくなる。ハンジの顔を見れば、にこやかに手を振って二人を見送っていた。
「あ、あの、兵長? いきなりどうしたんですか……?」
「うるせぇ。いいから黙って着いて来い」
「は、はい……」
何故か不機嫌なリヴァイにエミリは首を傾ける。言われた通り黙ったままリヴァイに着いて行く。
そして、リヴァイが足を踏み入れたのは民家。ここで一体何をするのか不思議に思いながら、リヴァイにただ引っ張られていた。
ギシギシと床が軋む音。その床にはガラスや陶器などの破片が散らばっている。窓は割れ、全体的に埃っぽい。蜘蛛の巣も張ってある。なんだか不気味だ。
怖くて縮こまっていると、急に立ち止まったリヴァイの背中に顔をぶつけた。
「兵長……急に止まられるとびっくりします」
鼻を押さえながらリヴァイを見上げる。そんな彼の前には一つの扉があった。リヴァイはそれに付いてあるドアノブを捻り、扉を開け中に入った。エミリも続いて部屋の中へ足を踏み入れる。
部屋にあったのは、埃をかぶった一つのベッド。そう、ここは寝室だった。