Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
打ち合わせを終えたリヴァイは、部下の様子を確認するため負傷者用のテントへ足を運ぶ。
この第二補給所に来るまで、また多くの犠牲を伴った。死亡者だけで数は30を超えている。負傷者はそれ以上だった。
今生きている兵士達だけでも、全員で帰還できたらと思うが、何が起こるか解らない、それが壁外だ。
だけど、人類は負けてばかりではない。
今回の壁外調査で起きた小さな変化。それが少しずつ積み重なれば、いつか大きな奇跡となるかもしれない。
リヴァイの脳裏にあるのは、彼の班員を救った少女。
そして、再びリヴァイの視界にその少女の姿が飛び込んでくる。
「ペトラ、出血の多い人にこの薬をお願い!」
「わかった!!」
「エミリ、次は何をすればいい?」
「それでは、この化膿止めを──」
薬を作るエミリの姿。その奥で横たわる、何十人もの負傷兵。さっきと似たような光景に、リヴァイは唖然とする。
「やぁ、リヴァイ!」
「……ハンジ」
「驚いたでしょ? 私もあれを見た時びっくりしたよ」
そう言ってエミリを瞳に映すハンジの目は、とても優しいものだった。まるで、彼女を温かく見守っているかのようだ。
「あいつ、いつから薬を作っていた?」
「さあね……打ち合わせが終わって来てみれば、既に調合に取り掛かっていた」
「…………」
ハンジの言葉にまさかと一つの考えが頭を過ぎる。
そこへ、リヴァイとハンジの近くを通り掛かった兵士に声を掛ける。水の入ったバケツを持っていた。おそらくエミリの所へ持っていくのだろう。
「……おい」
「は、はい!」
「エミリはいつから薬を作っていた?」
「確か……拠点に着いてからすぐだったと」
「え!? てことは、エミリ休んでないんじゃ……」
リヴァイが考えたのは正にハンジが言ったそれだ。リヴァイは溜息を吐くと、鍋をかき混ぜているエミリへ歩み寄る。