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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第12章 役割


上官から許可をもらい、付近の森で再び薬草を調達したエミリは、荷馬車からさっき使った道具を取り出す。
念のためにとフィデリオが集めた食器類を馬車に積んでおいたが正解だった。
今回は人数が多い。最初から道具まで集め直すとなると、薬を作り始める時間も遅くなっていただろう。

エミリは、エルヴィンから借りた資料を見ながら薬の調合を始めていく。その資料には、医師が処方した薬の一覧が記されていた。
それぞれどの部位が負傷したか、どういう状態であるか、症状によって様々な薬が用意されている。

一人ひとり、様子を確認しながらエミリは手を動かす。その間、兵士達の介抱をしているのはペトラ達だ。
三人はこの調査に出る前にエミリが教えたやり方の通りに手を動かしている。教えられたことをしっかりと応用出来ていた。


(本当に心強い……)


こうして今、エミリが安心して薬を作っていられるのも、三人が励ましてくれたから。勇気を与えてくれたから。


(ありがとう、大切なことに気付かせてくれて)


最初は、大好きなファウストのために薬剤師という夢を見た。大切な人を救いたいと思ったから。
でも、ファウストがいなくなってしまった。それでも、エミリがグリシャと共に勉強を続けていたのは、きっと、まだ心の中に誰かを助けたいという思いがあったから。


『いつか、私も誰かのチカラになれるような……そんな素敵な人になりたい』


初めての壁外調査を終えた後、エミリが望んだ理想の自分。それは、この薬剤師という夢に繋がっていたのかもしれない。


(ありがとう、私と出会ってくれて)


そう、最初は誰かを助けたいという気持ちから、この夢を目指していた。なのに、さっきのエミリは成功と失敗、それしか見えていなかった。

けれど、そんな弱い自分の背中を三人は押してくれた。三人だけじゃない、さっきのハンジの言葉、信じて任せてくれたリヴァイ、エルドやグンタ、時間を延ばしてくれたエルヴィン、そして、いつも支えてくれる調査兵団の仲間達……皆がいたからエミリは、いま、生きて夢を追いかけることが出来ている。


(だから、私を支えてくれた人達のために、感謝の気持ちを込めて作ろう……)

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