Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「……エミリ、皆こんなに苦しんでる。でも、エミリが薬を作れば、治るかもしれないんだよ!?」
「でも……失敗するかもしれない。そうなったら」
「皆と合わせる顔が無いってか?」
苛立ちを含んだオルオの問いに、エミリは無言で頷く。
「ふざけんな!」
「ッ!?」
オルオの荒んだ声が響き渡る。怒鳴り散らすようなそれに、エミリはビクリと身体を震わせた。
「もしお前が失敗したとしてなぁ、他の奴らはともかく俺達までお前から離れて行くと思ったか?」
「っ!」
オルオの言葉に、エミリは俯けていた顔を上げる。
「けっ、そんな風に思われてたなんてな! 心外だぜ!」
「オルオ……」
「本当、オルオの言う通りよ。ねぇ、エミリ。私はずっと、エミリが努力してきた姿を知ってるよ。エミリが誰よりも優しい人だっていうことも知ってる。そんな貴女を、大切な親友を見捨てるわけないでしょ!?」
「ペトラ……」
目に涙が溜まる。
二人の温かい言葉が、強くエミリの心に響き、染み込んでいく。
「もし、失敗してエミリを悪く言う人がいたら、私がひっぱたいてあげる! だから……エミリ、自分に自信を持って。逃げちゃダメよ」
一筋、涙が頬を伝う。
「大体なぁ、らしくねぇんだよ! お前はいつもみてぇにただ前向いて突っ走ってろ! バカ野郎!!」
とうとう耐えられず、エミリの目からとめどなく涙が溢れ出る。
「エミリ」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。
フィデリオだ。
「お前一人に背負わせねぇ。もし何かあったら、俺らが傍に居てやる。だから、やってくれるか?」
フィデリオ、オルオ、ペトラ、順番に大切な友の顔を瞳に映していく。
エミリは手の甲で頬を濡らす涙を拭い、いつもの笑顔を浮かべて言い切った。
「うん! 私、やるよ!!」
そんなエミリの顔は、今までで一番、自信に満ち溢れていた。
そんな彼女の表情と答えに、三人は小さく笑って頷いた。