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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第12章 役割


補給所に着いた頃には、もう陽が沈んでいた。今日はここで野営だ。
既に簡易テントが貼られた補給所で、エミリは荷馬車に積んである物資を運んでいた。

一通り荷物を運び終え、ぐっと伸びをする。頭に浮かぶのは、さっきエミリが助けたリヴァイの部下のこと。
今は大丈夫だろうか。念のため、予備の煎じ茶を作って渡しておいた。もし、また痛むことがあればいつでも飲めるようにと。


「……体調、聞いてみよう」


きっとどこかで休んでいるだろう。副作用などが無いか心配だ。そう思って、エミリは足を動かした。


「エミリ!!」


その時、フィデリオの酷く焦った声が響き、彼の方へ振り向く。深刻な表情でエミリの元へ駆け寄るフィデリオの額からは、少し血が流れていた。


「ちょっと、どうしたのよ! その血は」

「それよりも大変なんだ! 来てくれ!!」

「え!?」


ハンカチを出して、フィデリオから流れる血を拭き取ろうとするも、彼がエミリの手首を掴む方が早かった。
そのまま強く引っ張られ、エミリは足が絡まりそうになりながらもフィデリオに着いていく。そして、エミリは驚愕した。


「…………これ……」

「なあ、どうにか出来ないか……?」


エミリが目にしたものは、数個の簡易テントの下で横たわる、何十人もの兵士達。
腕や足が青く腫れ上がっている者、傷口が大きく開き血が流れ出ている者、骨折している者など、さっきのように、痛みに苦しむ兵士が殆どだ。


「……巨人が、大量に攻めてきた。倒すのに必死で、全部で何体いたかなんて覚えてねぇけど、みんな……巨人にやられた」

「…………」

「でも……奇跡的に、皆生きてここまで来れたんだ!! けど……こんな怪我じゃ、壁まで持つか分かんねぇ」


フィデリオは強く拳を握り、横たわる仲間達を見つめる。そんな彼の顔にあるのは怒りだ。
エミリはそんな幼馴染の拳にそっと手を添える。


「爪、手に食込んでる。落ち着いて……」


エミリがそう言えば、フィデリオはゆっくりと深呼吸をして身体の力を抜いた。

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