Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
拠点を出発した調査兵団は、今回の遠征の目的地である第二補給所の確保へ向かい、廃れた街を通って移動していた。
街の中をただ真っ直ぐ進むだけだが、それでもウォール・マリアは広い。巨人を相手にしながら移動するとなると、補給所までかなり時間がかかる。
「左前方より7m級発見!」
ハンジ班へ向かって走る巨人を隣合う民家の隙間から捉えたケイジが、その場にいる兵士達全員に聞こえるよう報告する。
「あれは通常種かなぁ? それとも奇行種?? どっちでもいいや〜今行くからね!!」
「分隊長! 危険です!!」
相変わらず巨人大好きなハンジは一人突っ走って行く。そんな彼女の後を追うのはやはり副官のモブリット。
さっきエミリに言葉をかけた時の落ち着いたハンジは、一瞬で奇行種へと変貌してしまった。
苦笑を浮かべ、気苦労が耐えないモブリットに同情していると、目の端で大きな影がゆらりと揺れる。それが巨人だと認識するまで、時間はかからなかった。
「もう一体、12m級発見!」
エミリが声を上げ、再び緊張が兵士達の心を支配する。
二体の巨人にはさみ打ちされたようなものだ。流石のハンジも大人しくなる。
「はぁ、仕方ないなあ。応戦する! 全員、立体機動に移れ!!」
ハンジの指示に、エミリも刃を抜いて民家の屋根に飛び移る。
民家は平地と違って、森林と同じく立体機動装置を使用するには最適の場所だ。しかし、巨人が建築物を壊したり、突進するなどして襲ってくるとなると、巨人ではなく瓦礫や破片の巻き添いとなり命を落とすことだってある。
民家で巨人と戦闘となった場合は、十分注意しなくてはならない。
エミリは上官や先輩らの指示を聞きながら、どんどん増えてくる巨人に立ち向かっていた。