Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「エミリーー!」
「ぎゃ!? ハンジさん!?」
フィデリオらと別れ、リノを連れて自分の班に戻ったエミリは突然ハンジに抱きつかれ状態を崩す。
相変わらず壁外でも……いや、壁外だからこそハイテンションなハンジには、未だについていけない。
「あ、あの、ハンジさん……重いです。あと、苦しい……」
「ああ、ごめんごめん!!」
あははと笑いながら離れるハンジだが、バシバシ背中を叩かれ痛い。
「というか、どうしたんです? いきなり抱きついてきたのでびっくりしましたよ……?」
良い巨人と出会ったのだろうか。そもそも良い巨人ってなんだ。自分で自分にツッコミを入れながらハンジを見るエミリは半目だ。
「そんな顔しないでよ〜。ホントにさ、エミリって最近モブリットに似てきたよね!」
「いや、普通の反応だと思います。あと、話が逸れてます」
「ああ、そうだったね! さっきエルヴィンから聞いたんだよ、エミリが薬を作ってリヴァイの部下を助けったって話をね」
「助けたって……そんな大袈裟な話じゃないですよ……」
そう、今回はたまたま運が良かっただけ。寧ろ、失敗するリスクの方が高かった。だから、薬が効いてくれたのは本当に奇跡だ。
「賭けとはいえ、そこには命を奪う危険性だって含まれていました……だから、」
「今回のは『まぐれだ』って言いたいの?」
エミリの言葉を遮るようにハンジが答える。エミリは静かに、首を縦に振る。
顔を俯かせ、自分の足元を眺めていると両肩にポンと手が置かれた。ビクリとエミリの体が震える。
「エミリ、"まぐれ"で人の命を救える程、世の中はそんなに甘くないよ」
「……でもっ!」
「なら、言い方を変えよう。エミリ、見てごらん」
ハンジが指さす方へ目を向ける。
「彼らのあの笑顔は、エミリが作ったものだ」
エミリの瞳に映ったものは、さっき横たわっていた兵士。彼はもう元気そうに立って歩いている。そして、班員のエルドやグンタ達と楽しそうに話をしていた。そんな彼らの顔には、"笑顔"があった。