Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「…………できた……」
何十分、何時間経ったかなど知らない。ただ、ひたすら作業に没頭していた。
浅い知識と昔の記憶を引き出しながら、間違えないように、慎重に……そして、できる限り速く。これはもう、気力と時間との勝負だった。
「エミリ、出来たの……?」
「……なんとか、ね」
しかし、まだ終わっていない。問題はここからだ。
エミリはティーポットから煎じ茶を器に移し、リヴァイの元へ持って行く。
「リヴァイ兵長、できました……」
声を掛け、器をリヴァイへ差し出す。それを受け取ったリヴァイは、横たわっている部下の頭を抱き上げ、器を口元へ持って行く。
「多分、苦いと思います……」
「……ああ」
「うっ……へ、ちょう……」
「薬だ。飲め」
リヴァイに声を掛けられ、兵士は額に汗を浮かべながら薄らと目を開ける。口元に寄せられた器とエミリを交互に見てから、ゆっくりと口を開けた。
「……ぐっ……」
相当苦いのだろう。時々声を漏らし、顔を歪めている。それでも彼は、少しずつ薬を飲んだ。
リヴァイは空になった器をエミリへ返し、ゆっくりと兵士の頭をシーツの上へ下ろす。
後は効果が出るのを待つだけだ。
「……エミリ」
「はい」
「効果はどれくらいで現れる?」
「……すぐに効き目が出るようにはしましたが、正直分かりません。私の予想では、一時間から二時間くらいです」
「そうか……」
つまり、二時間以上経っても効果が出なければ、失敗と判断すべきなのだろう。もしかしたら、二時間を超えてから効果が現れるかもしれない。しかし、そんなに長く待ってはいられない。
もうエルヴィンから次の指示が出されている。薬の件に関してはリヴァイがエルヴィンに話をつけていた為、こうして時間を延長することが出来た。但し、リミットは薬を与えてから二時間。それ以降は待たない、とのことだった。
エミリは手を組んで祈る。
どうか、薬が効きますように、と。それは、彼女だけではない。リヴァイや彼の部下達、そして、フィデリオ達も同じだ。
誰も言葉を交わさず、息遣いがエミリ達を包み込む。
そして、薬を投与して一時間が経った。