Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「巨人は全て俺が相手をする。エミリは出来るだけ早く薬草を集めてくれ!」
「わかりました!」
薬草が一番育っているであろう箇所まで馬を走らせた二人は、木の枝に愛馬を繋ぎエミリは薬草の採取、エルドは周囲の警戒へ移る。
エミリは草を掻き分け、植物を比較し、土を触ったり、引き抜いた草の根を食べたり、昔学んだ知識を引っ張り出し様々な方法で薬草を集めていく。
種類ごとに袋や瓶、箱に分けて肩から下げている鞄に収納する。
その最中、二体程の巨人と遭遇したがエルドがどちらも立体機動装置を巧みに使って倒していた。
「エルドさん! 終わりました!!」
「よし、戻るぞ!」
最後に薬草の種類と量を確認し、見落としが無いと判断したエミリは、エルドと共に馬に乗って拠点へ戻った。
「兵長、エルドとエミリが戻って来ました!」
森の入口から馬を走らせ出てくる二人の姿を見つけたグンタがリヴァイに報告する。
「……へい、ちょ…………」
「もう少しだ、耐えろ」
唸りながら、掠れた声でリヴァイを呼ぶ部下の手を強く握り、リヴァイは静かに声を掛ける。
まだ、薬も出来ていないし、その薬に本当に効果があるのかも分からないが、それでもリヴァイはエミリを信じた。
正直、何故エミリを信じようと思ったのか、その理由ははっきり分かっていない。
調査兵団に入ってからこれまで、分かれ道の連続だった。
自分の力か、仲間の力か……結果という未来は、その時にならないと解らない。
だから、いつも悔いが残らない方を選んで生きてきた。
だけど今回は、ただエミリを信じたいという願望にも似た思いが、リヴァイの心を動かした。そこに冷静な判断、思考は一切含まれていない。
もしかしたら失敗するかもしれない。それでもリヴァイは、エミリを一切疑っていなかった。