Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「フィデリオ!」
「っ! あ、エミリ!!」
手当を終えペトラやオルオと休んでいると、幼馴染に呼ばれたフィデリオはエミリの姿を見つけた途端、ムスッと顔を歪める。
「お前、どこ行ってたんだよ! 人手が足りなくて大変だっ」
「それはごめん! 後で借りは返す。それよりも大変なの! 休んでるとこ悪いけど手伝って!!」
珍しく必死なエミリの様子に気圧され、フィデリオは思わず押し黙る。さっきまでエミリに対してイライラしていた感情が静まり、取り敢えず一旦彼女の話に耳を傾ける。
「実はね……!」
エミリの口から話された内容に、フィデリオと側で話を聞いていたペトラとオルオが険しい表情を見せる。
「──というわけで、この民家から何か使えそうな道具を集めてほしいの! 集めたら、今度は水で綺麗に洗ってほしい!!」
「わかった、そういうことなら任せろ! 何が必要かは知ってる」
「ありがとう!!」
文句一つ言わずに協力してくれるフィデリオにエミリは感謝する。何だかんだ、いつも喧嘩ばかりしているがこういう時は居てくれると本当に助かっている。
「ねぇ、エミリ! 私達も何か手伝えない?」
「ペトラ……」
「俺も、あの人は、訓練の時もいつも俺にアドバイスくれたり、世話になってる。何かしたいんだ!!」
「オルオ……」
二人の目は真剣だ。さっき、エミリがリヴァイに頭を下げた時と同じくらいに。
二人のその眼差しに、エミリは頬を綻ばせ頷いた。
「うん、お願いするよ。じゃあ、ペトラは清潔なタオルとかシーツを沢山用意してほしいの。オルオは、木を集めて火を炊いて!」
「わかった!」
「任せて!!」
道具に関しては三人に任せて、エミリはエルドの元へ向かう。
仲間の優しさに触れ、エミリは思った。素敵な仲間に恵まれている。自分は幸せ者だと。
「エミリ、出発しても大丈夫か?」
「はい!」
森の入口で待っていたエルドと合流し、エミリはリノへ跨る。
「リノ、疲れてるのにごめんね。私に力を貸して!」
頭を撫でると、『ヒヒィン!』と鳴いて足を走らせた。それはまるで、大丈夫とエミリにエールを送っているように聞こえた。