Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
「……あの、グンタさん」
「何だ?」
「薬があれば良いんですよね……?」
「あ、ああ……少しは楽になるはずなんだが……エミリ、どうした?」
さっきまでとは表情が違うエミリに、グンタは眉を顰める。何か考えがあるとでも言いた気な顔だ。
「……鎮痛剤、作れるかもしれません」
その言葉に、リヴァイ班の班員が一斉にエミリに注目する。皆、驚いた様子でエミリを見ている。勿論、リヴァイも彼女の突飛な発言に顔を上げた。
「作れるかもって……どういうことだ?」
「ヨロイグサという薬草があります」
「よろいぐさ……?」
「その薬草のビャクシという根を使えば、鎮痛作用を持つ薬を作ることが出来るんです」
昔、グリシャが教えてくれたことを思い出しながら、彼らにも分かりやすいように説明していく。
「しかし、薬はビャクシだけでは作ることができません。ですが、あの森には沢山の薬草が育っているはずです。そこから薬草を集めて、あとはこの民家から使えそうな物を調達すれば、何とか薬は作れるはずです」
断定的に言えないのは、まだ実際に森にも民家にも入っていないから。だけど、薬草を潰したり混ぜたりできるような道具くらいはあるはずだ。
「薬は……私が作ります! 勿論、私はド素人です。だけど……このまま何もせずに終わるなんて、私は嫌です。だから、お願いします! やらせて下さい!!」
腰を折り、頭を下げる。必死なエミリの姿に、リヴァイ班の班員は複雑な表情を浮かべていた。
薬学に詳しくない彼らでも解る。ド素人のエミリに薬を作らせるということは賭けであり、それ相応のリスクも伴うということを。
「兵長、どうしますか……?」
エルドがリヴァイに問い掛ける。
リヴァイは頭を下げるエミリの前へ立ち、彼女を見下ろしながら言った。
「……エミリ」
「はい」
リヴァイに呼ばれ、エミリは頭を上げる。そして、真っ直ぐとリヴァイの目を見た。
エミリの瞳には、揺るぎない意思が込められている。
小さな灯火だがそれはとても強く輝きを放ち、決して消えることのない決意の火。
それを見たリヴァイは選んだ。
「……お前の判断を信じよう」