Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
『ねぇ、父さん。これ、何て薬草なの?』
エミリはグリシャと共に、薬草が沢山育っている森へ薬草の採取に来ていた。
薬剤師という夢を見つけたエミリは、医療についての勉強を始めた。そして一年が経った頃、ある程度の知識を身につけたエミリは、グリシャからフィールドワークの誘いを受けた。
こうして自然に触れることが一番大切だと、グリシャからよく教えられていた。
エミリは籠の中に入れた薬草を手に取り、まじまじとそれを眺めている。
『それは、ヨロイグサという薬草だ』
『……よろいぐさ?』
初めて聞く名前だ。何だか逞しそうな名前だなあ、と心の中で感想を述べながら、更に籠の中を覗く。
『あれ……』
そこで目に付いたのは、ヨロイグサの端に付いてある茶色の物体。長く歪な形をしている。これは何だろうか。自分では判別がつかないため、やはりグリシャに質問するしかない。
『ねぇ、このヨロイグサについてる茶色いのってなに?』
『ああ、それはヨロイグサの根だ。ビャクシといって、東洋の医学である漢方というものでよく使われている』
『かんぽう……?』
初めて聞いた気がしない。もしかしたら、本で読んだことがあるのかもしれない。
エミリはその単語を忘れないよう、何度も呟き記憶する。
『それにしても、このビャクシっていうのいっぱい採るんだね』
『ビャクシは色々な作用があるからな』
『そうなんだ』
ビャクシを手に取りながら、グリシャの話に相槌を打つ。最初はヘンテコな物体と思ったエミリだが、薬草も人間と同じで中身は見かけによらないということなのだろうか。
『ビャクシは麻酔、去痰、鎮痛作用を持っている。頭痛や腹痛、鼻炎、腫れ物などに使うんだ。他にも用途はたくさんある』
『へぇ〜ホントに色んなことに使えるんだね!』