Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
拠点に着くと、先に到着していた他の班の兵士達が負傷兵の手当で走り回っている。
第二補給所を確保する前に、既に多くの怪我人と犠牲者が出ていた。
「あ、エミリ!」
そこへエミリの耳に届く声は、毎日聞いている良く知るもの。
包帯やタオルを抱えたペトラが、冷や汗を流して駆け寄ってきた。
「ペトラ!」
「エミリ、手伝って!! 負傷者が多くて大変なの!」
「分かった。まだ手当が済んでない人のとこに案内して」
「うん!」
ハンジに声をかけてから、エミリはペトラと共に手当へ向かう。
この間、ペトラが教えてくれたエミリの力。同じように今回も手当をすることで、一人でも多くの人を助けたい。その思いを胸に、エミリは動き回った。
その時、別の場所からある男性兵士の声が聞こえる。
「本当にもう無いのか!?」
「は、はい……」
一体何をそんなに焦っているのだろう。何が無いのだろう。気になったエミリは、手早く手当を済ませてその男性兵士の後を追う。
その彼は確か、リヴァイ班の班員だったはずだ。ということは、精鋭班の誰かが負傷したということだろうか。
彼の後をつけてみると、リヴァイ班の班員が深刻な表情で集まっていた。
「どうだった?」
「…………」
エルドの問に、戻ってきた彼が首を振る。
何があったのだろうか。胸騒ぎがしたエミリは、エルドの隣にいるグンタへ声を掛ける。
「あの、グンタさん……何かあったんですか?」
「ああ、エミリか。……それが」
「っ!?」
グンタが顔を向けた方へエミリも動かして見る。そこには、シーツの上で痛みに悶え苦しむ精鋭班の兵士が横たわっていた。頭を強く打ったのか、巻かれている包帯は鮮血に染まり、相当な痛手であることが伺える。
その隣には、彼の手を強く握り神妙な面持ちでリヴァイがついていた。
「これはっ……」
「巨人との戦闘中に新兵を庇ってな……頭を強く打ったんだ。血は止まったが、痛みが引かないようなんだ」
激痛と高熱が彼を襲い続ける。びっしょりと大量の汗を流し、頭を抱え苦痛に歪む顔は見ているこちらも苦しくなるほどだ。