Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第12章 役割
今回の壁外調査は、シガンシナ区へ補給所の確保が目的だ。
早朝にトロスト区の門から出発し、まずは第一拠点へ補給物資を運ぶ。そして、生存者や天候の様子を見つつ、まだ進めるとエルヴィンが判断した場合は、そのまま第二拠点の確保へ向かうこととなっている。
「エミリ! お前は巨人の踵を狙え!!」
「はい!」
現在、エミリの所属するハンジ班は、民家が立ち並ぶ屋根の上で巨人と戦闘中だった。
マリアの壁が破壊されてから三年、もうあの頃の賑やかだった街の面影は一切残っていなかった。
崩れた建物、地面に散らばる白く硬いものはおそらく犠牲者の骨だろう。あちこちにこびりついた赤も、同様に人間が流した血が乾いたものだ。
上官の指示の元、巨人と戦いながらエミリは心を痛める。この街──シガンシナ区はエミリが育った街だから。
大好きな家族と過ごし、エレン達と遊び回ったこの街は、変わり果てていた。
「エミリ!」
「っはい!!」
故郷を眺めていると、同じくハンジ班である二ファがエミリの元へ駆け寄る。そんな彼女の表情は、とても険しいもので何かあったことが伺えた。
「二ファさん……? どうされました?」
「……今、口頭伝達で左翼側が壊滅的な痛手を負ったと知らされた」
「……え」
「陣形を閉じるのも難しいようなの。だから、私達はこのまま第一拠点に向かうよう指示が出された。すぐに準備を」
「ハッ!」
刃を直し敬礼をしたエミリは、すぐに近くにいたリノへ跨りハンジ達の元へ走らせる。
「リノ、大丈夫だよ」
少しソワソワして落ち着かないリノを優しく撫でてやる。
モブリットと真剣な表情で何かを話しているハンジを見つけ、エミリは駆け寄った。
「ああ、エミリ。無事だったんだね! よし、全員揃ったことだし、これから第一拠点へ移動する! 途中、巨人と戦闘になることもあると思うが、くれぐれも単独行動は控えるんだ!」
ハンジの指示にその場にいる全員が強く返事をする。一同は第一拠点を目指して馬を走らせた。