Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
本気で薬剤師を目指していた。だから、幼い頃から薬学に興味を持ち始め、勉強を始めた。グリシャにも、実際に森に連れて行ってもらい、色々な薬草があることを教えてもらった。
けれど、ファウストがこの世を去ってから、その夢を今の今まで忘れていた。
だけど、今朝のペトラの言葉がきっかけだった。
あの時ペトラが手当や医療の話をしてくれなかったら、薬剤師という夢もエーベルの言葉の意味も理解できなかっただろう。
でも、思い出すことができても、エミリが今進んでいる道は兵士だ。
あの頃は、兵士になるつもりなどなかった。だけど今は、兵士という道に誇りを持っている。
「エミリ」
「はい?」
「お前は……兵士という道を選んで後悔してねぇか?」
エミリとリヴァイの間に強い風が吹く。
リヴァイの問に、エミリは満面の笑みではっきりと言葉にした。
「してません。だって、兵士になっていなかったら、ペトラやオルオ、ハンジさんや団長達に会えませんでした。そして……」
一拍、間をあける。
「……リヴァイ兵長、貴方にも」
エミリが兵士を目指していなければ、三年前のあの惨劇で死んでいたかもしれない。
リヴァイがいなければ、あの失恋を乗り越えることは難しかったかもしれない。
だから、後悔なんてしていない。
する筈がない。
むしろ、兵士を選んで良かったと思っている。
ただ、少し……ほんの少しだけ言うなら、薬剤師の夢を忘れていた事に後悔はしていた。