Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「……これは」
リヴァイの目に入ったのは、黄。
太陽に向かって咲く、大輪の花。
そう、向日葵だ。
何十本、いや、何百本の向日葵が大地に根を張り、咲き誇っていた。
「良かった……今年もたくさん咲いてる」
どうやらエミリは、この向日葵畑を見に来たかったらしい。
嬉しそうに、頬をほんのりと赤く染めて向日葵をその純粋な瞳に映している。
「向日葵、私の一番大好きな花なんです」
そう言いながら、一番手前に咲いている向日葵にそっと触れる。
「……小さい頃、ファウスト兄さんが言ってくれたんです。『エミリは向日葵みたいだね』って」
「……そうか」
「はい。私、嬉しくて、『いつか一緒にこの向日葵畑に行こう』って言いました。でも……」
そっと目を閉じる。
瞼の裏には、申し訳なさそうに微笑むファウストの顔が浮かぶ。
「その時、もうファウストはベッドから動けない程、病に蝕まれていました」
『ごめん、エミリ。きっと、一緒に行けない』
ファウストの口から出た言葉は、決して良いものでは無かった。
「だけど、私、どうしても兄さんにこの向日葵畑を見せたくて……だから、言ったんです」
咄嗟に出た、幼いエミリの言葉。
『じゃあ、わたし大きくなったらお医者さんになる!!』
『エミリが?』
『うん! あのね、父さんが言ってたの! おくすりはお花をつかってできるんだって!! だから、兄さんの好きなお花でおくすりつくってあげる!!』
父のグリシャから教えて貰った、薬の作り方。それを思い出して、小さなエミリは一生懸命ファウストに伝えようとした。
『はは、そっか。でもエミリ、それはお医者さんというよりも、薬剤師さんかな?』
『やくざいしさん?』
『そう、薬剤師』
『じゃあわたし、"やくざいしさん"になる!』
初めてできたエミリの将来の夢、それが薬剤師だった。