Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「リヴァイ兵長」
帰り道。夕焼けが街を照らす中、立ち止まったエミリは少し先を歩くリヴァイへ声を掛ける。彼女の声に反応したリヴァイも歩みを止め、振り返った。
「何だ?」
「ありがとうございます」
突然、礼を言うエミリを不思議に思い、リヴァイは少し首を傾ける。
「私の用事に付き合って下さいましたから」
「何言ってる。俺が勝手に着いて行っただけだろう」
「そうですけど……でも、お陰で兵長と向日葵が見れました」
その言葉に、更に疑問が浮かぶ。
向日葵畑を見せたかったのは、ファウストであってリヴァイではないのに。
だけど、まるで一緒に向日葵を見たかったと言われているようで、リヴァイは心が温かくなるのを感じた。
「きっと、ファウスト兄さんの代わりに、誰かに見せたかったのかもしれません。……それが、兵長で良かったです」
どうして自分なのか分からない。だけど、エミリの嬉しそうな顔を見ていると、そんな事はどうでも良くなった。
「また、兵長と一緒に向日葵見に行きたいです」
エミリはふわりとはにかんで頬を赤らめる。そんな彼女の優しい表情に釣られるかのように、リヴァイは少し口角を上げ笑った。
「ああ、いつでも付き合ってやる」
リヴァイの表情とその言葉に、今度はエミリが驚いた。
彼の笑った顔を見るのは、これで二回目だ。
一度目は、初めて壁外調査に出たあの夜、執務室で言葉を交わした時だった。
「……兵長のそういう表情(かお)、珍しいですね」
「あ? 何の話だ?」
どうやら自分で気づいていないようだ。エミリはその事にまた驚きながらも、ふふっと小さく笑う。
そんなエミリをリヴァイは眉を顰めて見下ろしている。
「何笑ってやがる」
「いえ、ただ……また付き合って下さるんだなあって」
リヴァイが微笑んだのは、自分だけの秘密にしておこう。エミリは咄嗟に誤魔化す。
嘘をつくのが苦手なエミリだが、基本それは強がった時のみだ。だから今回の嘘に関しては全く問題ない。
「兵長、帰りましょう!」
「ああ……」
無邪気なエミリの後ろ姿を眺めながら、リヴァイも歩き出す。
(お前が居る世界を俺も感じてみたい……)
心の中でそっと呟きながら……