Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「おい、何処行くつもりだ」
「ナイショです! 着いてからのお楽しみです!」
ファウストの墓を後にし広場へ戻って来たリヴァイは、エミリに連れられ広場にある大きな庭園の中にいた。
その庭園は、春夏秋冬、季節に合わせて毎年様々な植物が植えられており、お出かけスポットとしても人気のある場所だ。
現在は六月。庭園には夏に開花時期の花々が並んでいる。
ちなみに、この庭園の目玉はバラ園だ。赤を始めとした色とりどりのバラが、まるで一つの大きな組織であるかのようにこの庭園を彩っている。
けれど、エミリの用はそのバラ園では無いらしい。
仕方なくエミリに着いて歩いていると、小さな樹の森に差し掛かる。
木のチップを敷き詰めた散策路は、クッション性があって歩いていて心地良い。木々の間から差す太陽の光と、森林の自然な香りが心を落ち着かせてくれる。
「……こんな場所があったのか」
「兵長、来るのは初めてですか?」
「……ああ。悪くねぇ」
植物というものに触れたことなど無い。
生れてからずっと、地下街というゴミ溜めの中で必死に生きてきた。
地上に出てからも、地下とはあまり変わらない。ただ"殺し"の対象が人間から巨人になっただけ。
血なまぐさい暗闇の世界しか知らない。だけど……
「ここ、実は穴場なんです。この森の存在自体気づいていない人が多くて。だから昼間もこんなに静かなんですよ」
「そうか……」
エミリがいる世界は、こんなにも穏やかで温かい。これが、生命の息吹というものなのだろう。
この世界は、リヴァイがいる世界とは真逆の場所だ。
「兵長、着きましたよ!!」
元気なエミリの声が聞こえる。
再び手を引っ張られ、彼女と共に森を抜けた。その先にあったのは───