Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
手を合わせて目を閉じるエミリの髪は、ふわりと風に揺れていた。
ファウストにどんな言葉を掛けているのだろうか、正直とても気になる。そして何より死んでも尚、エミリにこんなにも思われている彼を、少しだけ羨ましく感じた。
(…………羨ましい?)
そこでまた違和感を覚える。『羨ましい』と感じる自分がいることに動揺した。
(チッ、クソ……)
さっきから似たような事の繰り返しだ。しかも街でエミリを見かけてから。
彼女と居る時、いつもらしくない自分の行動に前々から違和感を感じていた。けれど、最近それが酷くなったように思える。
(…………前回の調査から帰って以来、か)
分析した結果、そう判断した。
今日の昼食の時にも、共に食事をしていたハンジから『そんなにエミリのこと気になる?』と冷やかされた。
何のことかと聞き返せば、『ずっとエミリを見ている』とのことだった。しかも最近よくあるとのお言葉付きで。
小さく溜息を吐き、片手で顔を覆う。それと共にくしゃりと前髪がかきあげられる。
気持ちが落ち着かずイライラしていると、下から視線を感じた。
目を動かして見ると、墓石の前でしゃがみ込んでいるエミリが心配そうにリヴァイを見上げていた。
「兵長? 具合でも悪いんですか?」
「…………いや、何でもねぇ」
「本当ですか?」
「ああ……」
エミリに声をかけられたリヴァイはさっと視線を逸らす。
情けない姿を見せてしまった様な気がして、内心とても焦っていた。そんな姿、見られたくなどなかったのに。
「それとも、考え事とか悩み事でもあるんですか……?」
「……何でもねぇよ」
「…………そうですか」
更に問い詰めるエミリの顔を見ないように答える。しかし、その行動からリヴァイが何かに悩んでいる事は見て取れた。
けれど、エミリはもう何も言わない。もしかしたら、仕事に関する重要な事なのかもしれないし、何より踏み込んで欲しくないこともあるだろう。でも、
「……あの兵長、せっかくですし、もう少し付き合って頂いてもよろしいでしょうか?」
「? ああ」
話を聞かなくても、誰かを元気にする方法はいくらでもある。
リヴァイの許可を得たエミリは、早速リヴァイの手を引いて歩き出した。