Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
ファウストの墓は、街の広場を抜けた先の小高い丘の上にあった。幾つもの墓石が並べられ、そこには名前が記されてある。
エミリは、ファウストの名が刻まれてある墓石の前へ立つと、花束を置き手を組んでお祈りする。
『ファウスト兄さん、久しぶり。ずっと会いに行けなくてごめんね。
訓練兵団を卒業して、調査兵団に入団して一年が経ったけど、何とか生き残れてるよ。
フィデリオも元気にしてる。素敵な仲間達と出会えて、私、いまとっても幸せ。
……この前ね、また失恋しちゃったんだ。
エーベル、結婚したの。シュテフィさんっていう、とっても綺麗な人と……すごく悲しかったけど、でも──』
そっと目を開けて、チラリとエミリの隣に立つリヴァイを見上げる。
『……兵長が隣に居てくれて、励ましてくれたんだ。だから、今はもう大丈夫』
あの日の温もりを思い出しながら、心の中でファウストに話続ける。
『兵長にはね、ずっとお世話になりっぱなしで、迷惑かけてばかりで申し訳ないけど……でも、そんな気持ち以上にとっても感謝してる』
話を聞いてくれたこと、抱きしめてくれたこと、助けに来てくれたこと、入院中の見舞いも毎日来てくれた。そして、三年前には命を救ってもらった。
今、エミリがこうして兵士としていられるのは、夢を追い続けることができるのは、リヴァイがいたからだ。
『だから、私……兵長にずっと着いて行く。そしたらね、こんな世界でもまた、好きな人が出来るかもしれない』
運命の人に、巡り会うことが出来るかもしれない……
調査兵の身分でありながら、こんな事を願うのは可笑しなことかもしれない。
この身はとっくに、人類に捧げられているものだから。それでもエミリは、ファウストとの最期の約束を守りたいと思っている。
何より、リヴァイからも『諦めるな』と言われたから──
『兄さん、私がんばるよ。時々、挫けちゃうこともあると思うけど……それでも、私には沢山の仲間がいるから、きっと立ち直れる。
だから、ずっと見守っていてね』