Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「おい」
「はい? 兵長!?」
花束を抱え歩いていると、突然声をかけられた。聞き慣れた声に不思議に思いながら振り向くと、そこには団服を着たリヴァイが小さな紙袋を手に立っていた。
「へ、兵長はお買い物ですか……?」
「……ああ」
相変わらず表情の乏しいリヴァイに戸惑う。
調査兵団に入って一年以上が経過し、その間にリヴァイには感謝してもしきれない程世話になった。
それらの出来事を通して、リヴァイとの距離はどんどん近くなっているように思えるが、やはり相手が相手だけにまだ少し緊張する。
今も、話しかけられたはいいものの、次はどんな話題をすれば良いか分からない。前にも何度か同じような事で悩んだことがあったのを思い出す。
「で、珍しくそんな格好をしてお前は何処へ行くつもりだ?」
「…………はい?」
予想外の質問に思考が停止する。
何故そんなことを聞くのだろうか。部下のプライベートにまで口出しするような人で無いことは知っている。だからこそ、疑問を感じた。
「あ、あの〜……兵長?」
「あ?」
「……えっと、何でそんなこと聞くんですか?」
「…………」
今度はリヴァイの思考が停止した。
(…………何でだ?)
エミリに指摘され、改めて理由が無かったことに気づく。しかし、考えている時間は無い。すぐに答えなければ、余計に怪しまれる。
今も、何も話そうとしないリヴァイを訝しげに見上げている。
「……何となく気になっただけだ」
「な、何となくって……」
答えになっているような、そうでないような……微妙な返答にエミリは眉を潜める。
「…………ファウスト兄さんのお墓参りに行くんです」
「……!」
控えめにエミリから出た言葉に、リヴァイはぴくりと眉を動かす。
彼女の手に抱えられている花束は、墓に供えるためのものだと理解した。
「ここ数年、全然会いに行けてなかったので……久しぶりに」
花束を見つめながら話すエミリの表情は儚げで、彼女を見ているだけで少し不安になった。
「……付き合う」
「へ?」
「俺も付き合うっつってんだ」
「は、はい?」
突拍子もないことを言い出すリヴァイに、エミリはぱちくりと瞬きを繰り返す。