Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
正午を過ぎると、街は午前と比べて人が溢れ賑わってくる。そんな中、小さな紙袋を手に調査兵団の兵士長は街を歩いていた。
相変わらず忙しいリヴァイは、書類とずっと睨めっこを続けていた。片付けても増えるばかりの仕事にうんざりし、気晴らしにと行きつけの紅茶屋へ茶葉を買いに足を運んでいたのだ。
買い物を済ませ、本部へ戻るために歩を進めるが、暑くて仕方が無い。空を仰げば照りつける太陽の光が眩しく、鬱陶しそうに目を細める。
そして、視線をまた前に戻す。すると、視界の端に見慣れた人物の顔が映る。はっとしてそちらへ視線を動かせば、花屋で花束を受け取るエミリがいた。
エミリは、花屋の店員と楽しそうに会話をしている。そして、花束を受け取ったエミリはそのまま店員に一礼すると、スタスタと歩いて行ってしまった。
「…………」
何となく気になって、彼女の後ろ姿を追おうと方向転換した所で、リヴァイは自身に違和感を感じた。
別に部下が花束を持って何処へ行こうが、それはそいつの勝手だ。なのに何故、こんなにも気になるのだろう、と。
もう一度、エミリの後ろ姿を見る。
団服は身につけておらず、今は私服を身にまとっていた。
半袖の白いシャツは、少しフリルがあしらわれ上品なものに見える。淡いレモン色のプリーツスカートは、生暖かい風に吹かれふわふわと靡いていた。
普段、後ろで一つに纏められている髪も下ろされている。
エミリにしてはお洒落な服装に花束、誰かと会う約束でもしているのだろうか。もし、それが男だとしたら……何だか面白くないと感じた。
「チッ、何なんだ……」
自分のことなのによく分からない。
深く溜息を吐いたリヴァイは、仕事のことも忘れ、感情の赴くままエミリの後を追うことにした。