Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「手当って、やり方によっては命を左右するものでしょ。だから、そんな大切な事を率先してやろうとするエミリはすごいなって」
ニコリと微笑むペトラを見ていると、段々と心が落ち着いてくる。
自分もちゃんと、そうやって兵団の力になれていたという事実に少しだけ安心した。
「だからね、私からもお願いしたいことがあって」
「何?」
「私の出来る範囲でいいから、医療のこと教えてくれない?」
「……うん、もちろん!」
嬉しかった。そう言って貰えたことが。
いつも誰かに与えてもらってばかりで、支えられてばかりで、何も返せていないと思っていたから。
「そろそろお昼だし、食べながらでも!」
「うん!」
立体機動装置を倉庫へ仕舞うために、二人は演習場を離れる。
(ペトラ、いつも隣に居てくれて、ありがとう……)
調査兵団に入って、ペトラと出会えて本当に良かったと思っている。
彼女だけじゃない、この兵団で出会った全ての人に、支えられ生きている。
だから喜びや楽しみを感じれる、悲しみや苦しみを感じられる。
そうやって"生"を感じられているのは、自分を取り巻く様々な人達のおかげだ。
少しだけ、エーベルが言ったことが解った気がした。
『フィデリオ達と違ったところに役割があるのかもしれない』
彼の言った通り、全く別の場面で兵団の力になれていた。それに気づかせてくれたのも、ペトラがいたからだ。
「……私、やっぱり与えてもらってばかりかも」
「何か言った?」
不思議そうにエミリの方へ振り返るペトラに、何でもないと首を振る。
再び前を向くペトラの横顔を目に映し、エミリは空を仰ぐ。
(……医療、か)
一言、心の中で呟いた。