Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「エミリ! ガスの量をもっと調整して!! 勢いが強すぎると、咄嗟の時に身動きが取れないよ!」
「うん!」
訓練を始めて約一時間。休憩を挟みながらも、ペトラに指摘してもらった通りに動く。それでもやはり、すぐに上手く出来るわけではない。
樹木の間を移動しながらガスの調整に意識を向ける。そうすると今度はアンカーの扱いが疎かになる。たった三ヶ月、されど三ヶ月と言ったところだろうか。あまりのブランクの大きさに心が折れそうになる。
「…………はぁ、はぁ……上手くいかない」
地面に降り立った二人は、近くの岩に腰掛け水分補給をする。エミリは手の甲で汗を拭い、その手で立体機動装置に触れる。
「……間に合うかな」
「どうだろうね……でも、間に合わせないと」
「うん……」
一ヶ月後にはまた壁外調査が行われる。この一ヶ月で、三ヶ月の遅れをどこまで取り戻せるかに掛かっている。
「でも、焦っても仕方ないよ。やれる所まで頑張ろう!」
「うん」
そう、考えているだけで体力はつかないし、技術が上がる訳でも無い。こればかりは積み重ねだ。
「それにしても、ペトラはスゴいね。以前よりもずっと早く飛べるようになっていた……」
復帰してペトラと訓練を再開してから感じたこと。立体機動で飛行している間、彼女のスピード追いついたことがない。彼女だけじゃない。フィデリオも、オルオも、他の同期たちも、皆上達している。
(また、か……)
これでは、訓練兵団の時と同じだ。自分だけ、置いてけぼりなったような気がして、すごく悔しいし辛い。ブランクに関しては自業自得。橋を飛び降りた自分を殴ってやりたいが、それも仕方の無いことだ。
「……私は、エミリの方がすごいと思うよ?」
「え?」
突然、ペトラに褒め言葉を送られたエミリは目を丸くする。
巨人との戦闘や技術面についてでは無いだろう。なら、それ以外では?
これまでに参加した調査のことを思い返して見るが、特に何かをした覚えは無い。
なら、ペトラはエミリの何を『すごい』と評したのだろう。