Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第11章 夢
「立体機動だったら、この俺が見てやるぜ」
「いや、オルオはいいよ」
両手を腰に当て、威張るオルオをエミリは冷たい口調であしらう。勿論、そんなエミリの態度にオルオは不満気に声を上げた。
「あのなァ、俺は前回の壁外調査で巨人を4体も討伐したんだぜ! "ひとり"でなあ」
「ねぇねぇ、ペトラ! 立体機動の訓練見てもらってもいい!」
「もちろん!」
「聞けぇ!!」
相変わらず空回りなオルオである。優れた戦績を持っているにも関わらず、女子コンビから空気の様に扱われている。そんなオルオの味方をするのは、親友であるフィデリオのみ。
フィデリオはポンポンとオルオの肩に手を置いた。
「ま、イロモノなのがお前だよな」
「フォローになってねぇガッ!」
「またかよ!?」
ツッコミすらも舌を噛んで決まらないオルオに、フィデリオは呆れながらもオルオにタオルを渡す。
「じゃあ今から、立体機動装置使ってみよっか」
「うん! よろしくー!」
「おい!! 待てよお前ら!!」
楽しそうにお喋りをしながら装置を取りに歩いて行くエミリとペトラに、オルオの背中をさすりながらフィデリオが声を掛けるもスルーされる。
どうして俺らだけいつもこんな扱いなんだ。他の奴らには優しいクセに、と心の中で悪態を吐く男組であった。
そんな可哀想な二人を放って倉庫に向かったエミリとペトラは、立体機動装置を腰につけて訓練場へ赴く。
「まずは、準備運動も兼ねて自由に飛んでみよう」
「うん!」
アンカーを木に刺し飛び上がるペトラに、エミリも同じようにして着いていく。
兵団に復帰し、訓練を再開してから驚いたこと。それは、ペトラ達三人の立体機動の腕がまた格段と上がっていたことだ。いつの間にか、三人共自分一人の力で巨人を討伐できるようになっている程に。
それと比べ、自分はどうだろう。三人よりも技術が劣っていることは自覚済みだが、それに加え三ヶ月という大きなブランクがある。更に距離が開いてしまった。
それでも落ち込んでいる暇など無い。そんな事をしている暇があるのなら、少しでも訓練しなければ。時間は待ってくれないのだから。