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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第10章 存在




「…………俺も……」


そこで、ようやくエレンが口を開いた。
エミリの昔話から、自分と同じものを感じ取ったのだろう。

エミリはプリンを食べる手を止めて、エレンをその瞳に映した。


「……何やっても上手くいかねぇんだ。ミカサはどんな訓練も完璧にこなすし……アルミンだって、頭が良いし判断力だって優れてる…………俺は、何も無い……」


エレンが幼い頃から勉強が苦手である事はエミリもよく知っている。
アルミンをいじめていたいじめっ子達にも、後先考えず、ただ感情に任せて突進していただけ。
そんないじめっ子を懲らしめていたのはエミリだったし、訓練兵団に入ってからはミカサが代わりを担っていた。


「……このままじゃ、何も果たせねぇまま終わっちまう……」


それは、ジャンに言われた言葉。

エレンも自分で口だけだと分かっている。でもだからこそ、日々の訓練は怠らず、さっきエミリが話したように自主練だって取り組んでいる。


「……ライナーに言われたんだ……」

「それは、お友達?」

「ああ。『ただ…やるべきことをやる。ただ、進み続ける。それしかねぇだろ』って……」

「…そっか」


少し、驚いた。それと同時に、安心もした。
ちゃんとエレンには、そうやって悩みを打ち明けられるような友人がいることに。


「……俺もそうするしかないって解ってるんだ。でも、なかなか前に進めない……」


目標に向かって突き進む。
その"進む"ことがどれだけ困難であるか、その"目標"がとてつもなく大きな山であるか、訓練兵団に入って初めて知った。

"何か"を成し遂げることが、こんなにも険しい道のりだとは思わなかった。

進むための、たった一歩。
それが、重くて仕方が無かった。


「……姉さん、俺……どうしたらいい?」


いつぶりだろうか。
こんなにも弱々しいエレンを見たのは……

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