Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第2章 決意
『……姉さん、訓練兵団に入るの?』
『うん、そうだよ』
『姉さんが入らなくたって、俺が入れば問題ないだろ』
『あら、エレンも反対なの?』
『だって……』
口篭るエレンの頭をポンポンと撫でる。
エミリが言えた口では無いが、少しは子を心配する親の気持ちを分かって欲しいと思う。
『大丈夫よ。私、お姉ちゃんだからエレンよりも強いもん』
『何だよそれ! 俺は男だから、俺の方が強いに決まってる!』
『えー、でもいつも街で喧嘩した時、私に引き摺られて帰っているのは誰かなあ?』
『ぐっ……』
喧嘩っ早いエレンは、友達のアルミンがいじめられているのを見ると、衝動的になってすぐに掴みかかる。そんな時は、決まっていつもエミリが仲裁に入り、ついでに相手のいじめっ子達を説教し、エレンを引き摺って帰っているのだ。
『い、今はそうでも、もっと大きくなったら俺の方が強くなる!』
『はいはい。分かった分かった』
『わかってないだろ!』
やっといつものように暴れ出すエレンに、エミリは安堵した。弟にまで心配かけるなど、姉としてまだまだ未熟だ。
『そうだ、姉さん! 調査兵団になったら、マント着て見せてよ!』
『うん、わかった!』
キラキラと純粋な瞳をエミリに向けるエレン。
やはりエミリにとって、エレンはまだまだ可愛い弟だ。何なら、ずっと……このまま子供でいてほしいと思う。
エレンはいつか、必ず、調査兵団へ入るのだろうから……
でもその時は、私がエレンを守る。
『今日は一緒に寝よっか』
『姉さんがどうしてもって言うなら!』
『ふふ。はいはい』
エレンを後ろからギュッと抱きしめながら考えた。
きっと、エレンが訓練兵団を卒業して調査兵団に入ったら、二人は今まで通り普通の姉弟として過ごせない。
上官として、部下として、時に残酷な判断をしなければならない。その時がきっとやって来るだろう。
それでも私は、エレンを守るよ。
どんな事があっても……